“きつね色”はなぜおいしいの?

こんがり焼けたクロワッサン、焼きたてのアップルパイ、サクサクのフライドチキン……。

きつね色の食べ物って、不思議と何でもおいしそうに見えませんか?

料理のきつね色は、探してみると色々なところにあります。

たとえば、ご飯のおこげやトースト。きつね色のおこげの部分は、ふっくら炊けた白いお米とはまた違った味わいがあります。食パンをトーストにすると、焼く前にはなかった香ばしいにおいが漂ってきます。

実は、このおこげもトーストも、同じ化学反応によって味が変化しています。食材に含まれるアミノ酸と糖は、お互いに反応し合って“メラノイジン”という物質を生み出します。これを“メイラード反応”と呼びます。そして、このメラノイジンこそ“きつね色”の正体なのです。 メラノイジンが発生するときには、香りの変化も起こります。たとえば、食パンを焼いたときの香ばしいにおい。ハンバーグやステーキを焼くときの、食欲をそそるロースト臭。冒頭に挙げたクロワッサンやアップルパイなども、あつあつの状態では一段と良い香りがしますね。

食パンをオーブントースターで3分ほど焼いて、こんがりとしたきつね色に。ほんのりとナッツやチョコレートに似たようなにおいがするのも、メイラード反応によるものです。

人は、食べ物の味を“視覚→嗅覚→味覚”の順番で認識しますが、メイラード反応によって食べ物がきつね色になり、香ばしいにおいを漂わせることで、私たちはそれを“おいしそう”と感じます。

食べ物の写真だけを見て、実際に食べていなくても“おいしそう”と感じるのは、これまで味わってきたおいしい食べ物の多くが、メイラード反応によって、おいしい見た目と風味を形成していたからなのかもしれません。

食べ物には、ほかにもいくつかの化学反応があります。食べ物をおいしくする化学反応もあれば、風味を劣化させる化学反応もあります。調味料やスパイスのように、化学反応も“匙加減”で味ががらりと変わるのかもしれませんね。

皆さんの好きな食べ物にも、きつね色の食べ物はありませんか?

料理のきつね色、メラノイジンが作り出すおいしそうな見た目は、おなかだけでなく心も満たしてくれます。

ただ、きつね色の食べ物にはカロリーが高いものが多いので、食べすぎには注意してくださいね。

事務局 K


<参考文献・URL>


”焼いたスイーツとメイラード反応”村田容常/化学と教育 67巻2号p.90-91/2019年2月/公益社団法人日本化学会
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kakyoshi/67/2/67_90/_pdf(参照2024.1.24)

”メイラード反応生成香気成分が有する新たな可能性への挑戦 食品メイラード反応の最新の香り研究”大畑素子,横山壱成,有原圭三/化学と生物 57巻12号 p.722-727/2019年12月/日本農芸化学会
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kagakutoseibutsu/57/12/57_571204/_pdf/-char/ja(参照2024.1.24)

クッキーやパンのおいしさの秘密 カラメル化とメイラード反応.株式会社パールエース
https://www.pearlace.co.jp/know-and-fun/tips/post-58.html(参照2024.1.24)