当館の自然の科学2階にある触れる剥製のコーナー。
中でも人気なのがこのツキノワグマです。
以前、お客様からこんな質問を受けました。
「新潟県内にもまだクマはいますか?」
たしかに実際に遭遇したことがある人は少ないかもしれませんが、新潟県内にもクマは生息しています。
新潟県に生息しているのはツキノワグマという種類で、昨年度、県内のツキノワグマの痕跡・目撃情報はなんと1400件以上!!人身被害を防ぐため、県が注意喚起のチラシを作成しているほどです。
ぬいぐるみや絵本では可愛らしいイメージがあるのに、なぜ、注意喚起までされているのでしょうか。
それは、本物のツキノワグマはとても力が強く、不意に遭遇すると攻撃してくることもあり、危険だからです。
実際に遭遇したら観察どころではありませんが、当館の剥製ならじっくりと観察することができます。
ツキノワグマの前足や後ろ足の先には、カーブした鋭い爪がついています。
前足の筋肉が発達しているため、力も非常に強く、このカーブした爪を木に引っ掛けて、簡単に木に登ることもできます。
また、冬眠用の穴を掘るなど、爪は様々な用途に使いますが、攻撃の時には強力な武器にもなります。
口の中も見てみましょう。
大きな犬歯が目立っているので、肉食のイメージが強いかもしれませんが、雑食性で、実は食べ物のほとんどが木の実や新芽などの植物なのです。
残念ながら当館の剥製では見えにくいのですが、臼歯(奥歯)は植物をすり潰しやすいよう、平たい形をしています。
かたいクルミの殻を簡単に砕いてしまうほど、噛む力も非常に強いのです。
後ろ姿もズングリとしていて、動きはゆっくりしていそうなイメージですが、足がとても速く、100mを7秒ほどで走ることができると言われています。
現在の陸上男子100mの世界記録が9.58秒・・・
つまり、我々人間は追いかけられたら逃げ切ることはできません。
ツキノワグマは基本的にはおとなしく、臆病な性格と言われています。
しかし、不意に人間と遭遇して驚かせてしまった時など、その鋭い爪や歯で攻撃してくることもあります。
初夏はツキノワグマの繁殖期にあたり、行動範囲が広がる時期です。
山へ行く機会のある方は、遭遇しないようにクマ対策をお忘れなく!
インタープリター・土屋
≪参考≫
・『新潟県ホームページ / ツキノワグマによる人身被害を防ぐために』 (https://www.pref.niigata.lg.jp/sec/kankyokikaku/1319666477308.html)
・『環境省 / 野生鳥獣の保護及び管理』(https://www.env.go.jp/nature/choju/effort/effort12/effort12.html)
・『白山の自然誌32 ツキノワグマの生態』(https://www.pref.ishikawa.lg.jp/hakusan/publish/sizen/documents/sizen32.pdf)
・『滅びゆく森の王者 ツキノワグマ』 著・編:岐阜県哺乳動物調査研究会
・『クマ大量出没注意 広報いといがわ 2019年11月号』