みなさまこんにちは。学芸担当のKです。8月後半に入り夏もそろそろ終わりそうですが、いかがお過ごしでしたでしょうか。
さて、今回は自然豊かな当館屋外展示場のお話です。皆さんは屋外展示場へ行かれたことはあるでしょうか?外へ出て右奥へ進むと、さまざまな植物がある『花木園』があります。じつは今年の5月下旬のこと、Kが館に勤めるようになってから初めて、花木園であるモノを見つけたのです。それは…
これ、ただのリンゴではありません。いえ、リンゴはリンゴなのですが…この実はなんと、『ニュートンのリンゴの木』にできたリンゴなのです。かの偉大な科学者アイザック・ニュートンが「リンゴの実が落ちるのを見て万有引力の法則を発見した」という話がありますが、『ニュートンのリンゴの木』はそのニュートンの生家にあった木を接ぎ木し、育てられたもの。
スタッフKは科学館へ来てから、初めてこの木に実ができたところを見ました。なぜならば、リンゴはそんなに簡単に実を付けないから。リンゴは自家不和合性の植物のひとつで、自身の花粉では受粉せず、他からの花粉でのみ受粉し、実を付けます。これは他の種と交わることによって子孫を多様化させ環境に適応できるようにしようと進化した結果だと考えられています(中には自家受粉するリンゴもありますが、多くの品種は他家受粉が必要)。館ではリンゴの木はこの木1本しかなく、誰も受粉作業をしていないため、昆虫が何処かからリンゴの花粉を運んできてくれたとしか考えられません。一体どこのリンゴの木から運ばれてきたのでしょうか?
兎にも角にも、この奇跡のような結実。数えてみたら10個近くできていました。さてこれをどうするか?もちろん育てる!ということで、6月の晴れた日に袋掛けを行いました。専用の袋を実1つ1つに掛けていきます。袋を掛けることで病害から実を守ってくれるそうです。
そして月日が流れ…8月現在。リンゴの実はすべてなくなってしまいました…。徐々大きく育っていった実。7月下旬あたりからは赤く色付き始めた実も見られ楽しみにしていたのですが、強風や雨などの影響もあり、実がぼとぼとと落ちてしまいました。
タイトルのとおり、リンゴは木から落ちる、だからこそ万有引力の存在を思い出せるというものです。とはいえ、やはりまだ熟していないのに地面に落ちてしまったリンゴの実を見たときにはショックでした。これもまた自然のひとつということで仕方がないですね。
さて、これから先の季節はというと。秋の花木園ではアズキナシの実や、クリ・トチノキなどの種子が落ちているのを観察することができます。
一面に拡がるクリのイガ…。写真は数年前の秋の花木園ですが、毎年こんな風景が見られます。転ぶと確実に痛い思いをしますので、近くで観察される際にはご注意くださいね。もちろん上から落ちてきますので、頭上にも注意!です。
※皆様へのお願い
花木園の植物は展示のひとつですので、採取や持ち帰りはご遠慮ください。
花木園は自然の様子を観察していただくための場所です。一人でも多くの方に楽しんでいただきたいと考えておりますので、実や花、葉などの採取・持ち帰りはなさらないよう、ご理解・ご協力をお願いいたします。
学芸K
≪参考≫
■ 名古屋大学大学院生命農学研究科 園芸科学研究室HP
バラ科植物自家不和合性の分子機構 -リンゴ自家不和合性-
(https://www.agr.nagoya-u.ac.jp/~hort/matsumoto.htm)
■ 石山正行・北山弘・佐藤耕・石沢清・中村喜治・鈴木長蔵・山田三智穂 (1995)
リンゴの交雑和合性,青森県りんご試験場報告 第28号