みなさん、こんにちは。寒さが厳しい日が続いておりますが、いかがお過ごしでしょうか。
今回は当館の展示から、なんとも不思議な「冬虫夏草」についてお話ししようと思います。それがこちら。
(ちょっと閲覧注意!)

どう見てもトンボに見えますが、こちらは自然の科学2階にある、ヤンマタケという「冬虫夏草」の展示です。
「冬虫夏草」といえば漢方薬の1つとしてご存じの方もいるかと思いますが、その正体は虫でも草でもなく、なんと「きのこ」です!
「冬虫夏草」という名前は、「冬は虫だったものが、夏になると草になる」と考えられていたことに由来します。元々は中国でコウモリガの仲間の幼虫から発生するものを「冬虫夏草」と呼んでいたそうですが、今では「昆虫などを殺してその体を養分にし、成長するきのこ」の総称として使用されています。
展示のヤンマタケも冬虫夏草の一種で、夏から秋にかけて生きているトンボの成虫に寄生します。木の枝などに止まって冬を越し、翌年の夏に体の節々からこん棒状の子実体(きのこ状の部分)が伸びてきます。雪の多い地域では、冬の間に枝と一緒に落下してしまうことも多いそうです。

この標本のトンボはアキアカネですが、ヤンマタケは発見当初、ヤンマ科のトンボに寄生していたことから、その名前になりました。さまざまなトンボの記録がありますが、多く発見されているのはアカトンボ類のノシメトンボや、ヤンマ科のミルンヤンマなどです。
冬虫夏草は現在知られているだけでも500種類以上あり、その寄生先はセミ、アリ、クモ、カメムシ、ゴキブリなど様々です。
ふと、「人間にも寄生するのかな?」と思い、調べてみると……
…今のところ、人間に寄生する冬虫夏草は見つかっていないようです。良かった。
冬虫夏草は珍しいものと思いがちですが、意外なことに種類によっては街中でも見ることができます。湿り気を好むため、近くに池があるなど湿度条件が良く、下草が生えていないような適度に整備された場所(庭園や寺社仏閣の境内など)を探すと良いそうです。
季節はちょうど冬。今ごろ冬虫夏草は宿主の体の中で成長しながら夏を待っているのでしょうか。
夏になったらこの不思議なきのこを探してみたいと思います。
コミュニケーター S
<参考文献>
・盛口満.新訂 冬虫夏草ハンドブック. 文一総合出版,2023年.
・日本冬虫夏草の会. 冬虫夏草生態図鑑: 採集・観察・分類・同定、効能から歴史まで250種類. 誠文堂新光社, 2014年.
・東北大学薬学研究科・薬学部 附属薬用植物園.“ヤンマタケ”,https://www.pharm.tohoku.ac.jp/~yakusoen/contents/tyuso/tyuso_list/yammatake-2/,(参照:2026年1月18日)
