食虫植物の化石

当館では新潟大学創生学部の授業『フィールドスタディーズ』の一環として、学生の受け入れを行っています。フィールドスタディーズとは、学生が企業や自治体など、学外のフィールドに赴き、グループごとに課題に取り組む授業です。当館では、「科学館の常設展示物の魅力を引き出し、より楽しく、面白くする手法を検討し、実践する」という学修テーマのもと、今年は5名の学生を受け入れ、『食虫植物』に関する展示を製作していただきました。

※食虫植物とは、葉を使って虫をおびきよせ、自分の栄養にしてしまう植物です。詳しくは、展示をご覧ください。

調べものをする田村(奥)と学生
完成した食虫植物の展示
(食虫植物の実物標本3種類や、捕食する映像をご覧いただけます)

さて、ここからが本題です。私は大学時代に化石について研究していたため、学生と食虫植物について調べながら、食虫植物の化石は見つかっているのかが気になっていました。調べたところ、食虫植物の化石は非常に少なく、日本からの報告はまだないことがわかりました。ここでは、ロリドゥラ属(Roridula)という食虫植物の化石について紹介します。その化石がこちらです。

左下のスケール:1mm
引用:National Library of Medicine

この化石は、北ヨーロッパに位置する『バルト海』の琥珀の中から見つかりました(背景が黄色っぽいのは琥珀の中だからです)。写真をじっくり見ると、当館で展示している食虫植物『モウセンゴケ』と同じように葉の表面にある腺毛が、きれいに保存されているのがわかります。

モウセンゴケの葉とその繊毛

ロリドゥラ属の仲間は、現在も南アフリカの湿地に生息しており、ベタベタの長い腺毛で虫をとらえ、これを食べにくるカメムシのフンを吸収する驚くべき生態をもちます。もしかしたら、化石から見つかるロリドゥラ属も同じような生態をもっていたのかもしれません。

食虫植物は、当館の自然の科学2F「特設コーナー」にて8月31日(木)まで展示しています。是非、この機会に食虫植物の魅力やフィールドスタディーズの取り組みについてご覧ください。

企画グループ・田村