
突然ですが、みなさんは、月のイラストに色を塗るとしたら、何色に塗りますか?
月といえば黄色を思い浮かべた方も多いのではないでしょうか。
でも、実際に空で観察すると、



赤やオレンジ系の色や黄色に見えたり、白っぽい色に煌々と輝いて見えたりします。
月は、いったい何色なのでしょうか。
■ 宇宙から見る月

この画像は、アメリカの航空宇宙局NASAによって2022年に打ち上げられたオリオン宇宙船が撮影したものです。左側に写っているオリオン宇宙船のすぐ向こうに月の一部が大きく見えています。画像を見ると、月は灰色(グレー)のような色をしているのが分かりますね。
月は、地球と同じように岩石でできている天体です。主に白っぽい色の斜長岩や黒っぽい色の玄武岩などでできていて、表面は「レゴリス」と呼ばれる細かな砂で覆われています。
また、月は自分自身では光っていません。太陽の光に照らされることで光って見えます。
つまり宇宙では、表面を覆う岩石や砂が太陽の光に照らされ、月本来の色、灰色(グレー)に見えるんです。
■ 地球から見る月
では、なぜ地球から見ると、黄色やオレンジ色に見えたり、白っぽく輝いて見えたりするのでしょうか。

太陽の光を月が反射して私たちの目に届くとき、地球の大気を通ります。 そのときに、大気の中にあるチリなどにぶつかり、光が散乱されるという現象が起きるのです。これを「レイリー散乱」といいます。
この「レイリー散乱」の現象をペットボトルの中で再現してみましょう。
<準備するもの> ・ペットボトル ・水 ・牛乳 ・ライト(なるべく明るく白色に光るもの)
まず、ペットボトルに満タンになるよう水とほんの少しの牛乳を入れ、白く濁った水を作ります。ライトが太陽、ペットボトルの中に入っている白く濁った水が大気のかわりと考えてください。
では、部屋を暗くして、濁った水が入ったペットボトルにライトを横から当ててみましょう。

ライトの光は白色ですが、ペットボトルの中の水に通すと、ライトに近い方は青白く、遠くなるにつれて、オレンジっぽくなっています。この色の変化が、「レイリー散乱」による現象です。
実は、太陽の光には、いろいろな色が含まれていて、すべての色が混ざり合って、白色の光に見えています。
「レイリー散乱」では青い光ほど散乱されやすく、赤い光ほど散乱されにくいので、

ライトの白い光は、ペットボトルの水の中に含まれる牛乳の小さな粒子にぶつかって、青系の光が散乱され、ライトから遠くなるほど、オレンジや赤系の光が強くなります。
つまり、太陽の白い光は大気を通る距離が短いほど青や白っぽい色に、大気を通る距離が長くなるほどオレンジや赤い色に見えるんですね。
月が太陽の光に照らされて私たちの目に見えるとき、この「レイリー散乱」が起こり、大気を通る距離によって、色が変化して見えます。
月が地平線に近い位置にあるとき、例えば、月が昇ってすぐの時間には、光が大気中を進む距離が長くなります。
すると、光は大気中のチリなどにぶつかって、青い光が散乱され、月の色が赤やオレンジに見えるのです。

時間が経ち、地平線より少し高いところに月が昇ると、黄色っぽく見えるようになります。

さらにもっと時間が進んで、真夜中になると月が空の高いところに昇ります。このとき大気中を進む距離が短くなるため、光が散乱されにくくなり、太陽の白い光がほぼそのまま届いて、白っぽく輝いて見えます。

このように、月は、見える位置(高さ)によって赤、オレンジ、黄色や白など異なる色に見えることがあるのです。
月は、三日月や半月、満月など、日によって形が変わる様子を楽しめますが、「月が何色に見えるか」に注目して眺めてみるのも面白いですね。
■ 皆既月食の赤い月
ところで、今年、2026年3月3日のひな祭りの日に、皆既月食という珍しい現象が起こるのをご存じでしょうか。

皆既月食は、満月が地球の影に入り、赤く見えるという現象です。なぜ皆既月食では、赤く見えるのでしょうか。
それでは、月の画像の前にペットボトルを置いて、ライトを当てて実験してみましょう。

ペットボトルが1本のときは、月の画像が白っぽく見えますね。
今度は、ペットボトルを4本並べて、光が大気中の長い距離を通るようすを再現してみます。

月の画像の色が赤っぽくなっているのが分かりますでしょうか。これは、月が地平線近くに見えるときと同じように、レイリー散乱によって赤い光だけが月の画像に届いたということです。
皆既月食では、地球の影に月が入り、太陽の光が直接当たらなくても、少しだけ太陽の光が届きます。地球の大気が太陽の光を屈折させるからです。ただ、光が屈折して月まで届くといっても、レイリー散乱は起こってしまうので、青系の光は散乱され、赤い光だけが大気を通り抜けて、月をほんのりと照らします。

そのため、地球にいる私たちには、月の高さに関係なく月が赤く見えるというわけです。

3月3日の後、次に皆既月食が見られるのは、2029年1月1日です。
皆既月食が起こる日じゃなくても、晴れていて月が見えていたらぜひ色をチェックしてみてくださいね!
また、今回使用したペットボトルの実験は、おうちにあるもので簡単にできます。お天気が悪くて月を観察できないときは、実験を試したり、結果を考察したりして楽しんでみてはいかがでしょうか。
プラネタリウム解説員 TJ
※使用している画像はすべてイメージです。太陽、地球、月のイラストは見やすくするために実際の縮尺と変更してあります。
<参考>
・国立天文台. “大気による散乱”. 暦計算室 暦Wiki. 2020-5-27. https://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/wiki/C2E7B5A42FBBB6CDF0.html , (参照 2026-2-8).
・国立天文台. “月が赤く見えるときがあるのはなぜ?”. よくある質問 . https://www.nao.ac.jp/faq/a0203.html, (参照 2026-2-11).
・アストロアーツ. “【特集】2026年3月3日 皆既月食: 月はなぜ赤くなる? 月食が起こる理由”. アストロアーツ. https://www.astroarts.co.jp/special/20260303lunar_eclipse, (参照 2026-2-11).
・国立天文台. “皆既月食(2026年3月)”. ほしぞら情報2026年3月. https://www.nao.ac.jp/astro/sky/2026/03-topics02.html , (参照 2026-3-1).
・国立天文台. 月食一覧. https://www.nao.ac.jp/astro/basic/lunar-eclipse-list.html, (参照 2026-2-11).
・浦 智史. 世界でいちばん素敵な月の教室. 三才ブックス, 2019, p.121.
・池内 了監修ほか. 小学館の図鑑NEO〔新版〕 宇宙. 小学館. 2018年,p.27
