皆さんは「佐渡ブロック」という言葉を聞いたことがありますか?
これは佐渡島があることで新潟市の降雪量が少なくなる効果を指す言葉です。私は生まれも育ちも新潟市ですが、この言葉は聞いたことがありませんでした。
でも、幼い頃から私の母や周りの大人たちは「佐渡があるおかげで新潟市内は雪が少ない」と言っていたのを思い出しました。
だから今年の夏、こんな見出しの記事を見つけたときは驚きました。
「佐渡島が新潟の降雪量を減らす「佐渡ブロック」のメカニズムを解明」。
当たり前に信じていたことが、実は研究されていなかったとは!
言ってしまえば、幼いころから聞いてきたことは人々が信じる俗説に過ぎなかったということなのでしょう。
そもそも、佐渡ブロックの存在は1983年の論文で仮説として提唱されました。
大陸から吹く冷たい季節風を佐渡島がブロックして迂回させることが、風下にある新潟市の降雪量を減らす一因であると考えられていました。
信じられてはいたものの、佐渡ブロックの存在を学術的に証明したのは今回が初めてで、このような見出しの記事になったというわけです。この研究では佐渡ブロックの影響は風下150㎞以上に及ぶという詳細も示唆されています。そして、佐渡ブロックを起こすメカニズムも解明されたというわけです。
画像引用:H.,Kusaka, N., Suzuki, M.,Yabe, H., Kobayashiagata.(2023) The snow-shadow effect of Sado Island on Niigata City and the coastal plain ; Atmospheric Science Letters,24, DOI: 10.1002/asl.1182
今回この論文を読んでみての感想は…すごいおもしろい!
データ解析や数値実験によって見えない現象が視覚化されると興味津々になります。
でもそれ以上に、自分の中の常識や当たり前と信じていたことが誰かの研究対象になるなんてとても面白いと思いました。
大人になるとガチガチの固定概念を持ち、当たり前に見たり感じたりすることに疑問を抱かなくなりがち…の気がします。でも、視野を広く持って好奇心を持ち続け、乾いたスポンジのように様々なことを吸収したいです。「これって本当かな!?」といろいろなことに興味を持てたら楽しいですよね、きっと。
企画グループ W
[参考]
H.,Kusaka, N., Suzuki, M.,Yabe, H., Kobayashiagata.(2023) The snow-shadow effect of Sado Island on Niigata City and the coastal plain ; Atmospheric Science Letters,24, DOI: 10.1002/asl.1182.
筑波大学計算科学研究センター. [ウェブリリース]佐渡島が新潟の降雪量を減らす「佐渡ブロック」のメカニズムを解明.2023, https://www.ccs.tsukuba.ac.jp/release230723/, (参照2023‐11‐20).