みなさんこんばんは(昼間にご覧になった方はこんにちは)!
プラネタリウム解説員のすじこです。
突然ですが、みなさんは現在使われている「星座」が全部で何個あるのかご存知でしょうか?
答えは……「88個」です。
これは1922年にIAU(国際天文学連合)が、これまでの歴史の中で生まれた大量の星座を整理し、まとめ、世界共通はこれだ!と決めたものです。これにより世界中どこに行ってもこの88の星座は通用するのです。
実は、今年はこの星座制定からちょうど100年という記念すべき年でもあるんですよ。
また、IAUは星座だけでなく、星の固有名や番号も決めています。(こちらは近年制定されました)星の固有名には色々な時代に色々な人が名付けていた歴史があり、現在は昔から世界で広く使われている名前が星の固有名として採用されています。
星の固有名の名づけられた経緯には面白いものもあるんです。今回は、この時期に夜空で見られるあるひとつの星「コル・カロリ」についてご紹介します。
コル・カロリはりょうけん座を形作る星で、「春の大三角」の西側に輝きます。コル・カロリと春の大三角をつないでできるひし形の星の並びは「春のダイヤモンド」と呼ばれています。
りょうけん座は、星座絵では、リードでつながれた2匹の猟犬の姿として描かれ、それぞれ「アステリオン」と「カラ」という名前がついています。りょうけん座の星の並びは、2つの星で形作られます。2つの星の名前のうち、一つがカラ、そしてもう一つがこのコル・カロリです。
コル・カロリという星の名前の意味は「チャールズの心臓」です。ここでいう「チャールズ」とは、17世紀のイギリスの王様であるチャールズ2世のことを指しています。
そして、このコル・カロリという星の名前の由来には「ハレー彗星」で有名な天文学者エドモンド・ハレーが関係しています。ハレーは17世紀の天文学者で、南半球に見える星々や流星、彗星などの研究を行い、多くの功績を残した人物です。
一方、チャールズ2世は、イギリスで起きた革命によって父親の国王チャールズ1世が処刑されたあと、ヨーロッパ各地を転々としていました。しかし情勢の変化により、再びイギリスに迎え入れられ、国王に即位します。この即位の前夜、りょうけん座のひとつの星が突然異常なほど明るく輝きだしたのだそうです。そして、これを目撃した王の侍医が天文学者ハレーに伝え、ハレーはその星に「コル・カロリ(チャールズの心臓)」と名付けたのだといいます。
まるで神話のような展開ですが、この話には2つの不思議な点があります。
①コル・カロリという星は、それほど明るさが激しく変化する星ではありません。たしかに明るさが変わる星ではあるのですが、その周期は5日ほど。即位の夜にだけ異常に明るく輝いたというのは考えにくいです。
②ハレーとチャールズ2世は同じ時代に生きた人物ではありますが、チャールズ2世が即位した当時、ハレーはまだ4才。王室とは直接関りがない小さな子供でした。のちに大人になって王の侍医から話を聞いたのかもしれませんが、異常に明るく輝くコル・カロリを実際に見ていたかどうかは不明です。
真実は分かりませんが、チャールズ2世がグリニッジ天文台(現在まで残っている天文台のひとつで、世界標準時の基準となっている天文台です)の創設など、天文学の発展に貢献した人物でもあり、ハレーが後にこのグリニッジ天文台の2代目天文台長にも就任したことなどが関係しているのかもしれませんね。
今回のお話を読んでみて、みなさんはどう思いましたか?
いったい何が真実なのか……そんな推理も楽しみながら、りょうけん座を眺めてみても面白いかもしれません。
りょうけん座は今月末まで、21:00~22:00頃の南西から西にかけての空高いところにあります。探す時にはなるべく街明かりが少ないところや月明かりのない夜に探すのがおすすめですよ。
今回ご紹介した以外にも、色々な星や星座があります。
これから雨が多い時期がやってきますが、当館プラネタリウムでは天候に関わらずいつでも満天の星をお楽しみいただけます。雨の日こそぜひお越しくださいね!
プラネタリウム解説員 すじこ
【参考文献】
山田卓著『春の星座博物館』2005年 地人書館
原恵著『星座の神話』1975年 恒星社厚生閣
林完次著『天の羊』1997年 光琳社出版