秋は食べ物が美味しい季節です。特に全国有数の米どころである新潟県では、秋の新米を楽しみにしている方も多いのではないでしょうか。
米とならび新潟県を代表するものに、日本酒があります。
秋に出るお酒は「ひやおろし」といって、春に搾ったお酒に一度だけ火入れを行い、夏の間に熟成させた後は火入れを行わずに出荷される生詰め酒です。
秋が到来し、外気と酒を貯蔵している蔵の中の温度が同じくらいになる頃に、日本酒で常温を意味する「冷や」の状態で「おろす」ことから「ひやおろし」と呼ばれるようになったといわれており、江戸時代からの風物詩として親しまれてきました。
また、ひやおろしは出荷時期によって味わいが異なるのも魅力の一つといえます。
同じひやおろしでも、9月は「夏越し酒」、10月は「秋出し一番酒」、11月は「晩秋旨酒」と呼び名が変わり、季節とともにその味わいも少しずつ変化していきます。
このひやおろしの出荷が終わるころに、多くの酒蔵では「杉玉」の付け替えを行います。
杉玉とは、酒蔵の軒先に吊るされた杉の葉で作られた丸い玉で、「酒林」とも呼ばれています。
杉玉は一年に一度、新しいものに取り替えられますが、新しい杉玉を吊るすことは「新酒が出来た」という酒蔵からの合図になっています。
作りたての杉玉は杉の葉の瑞々しい緑色をしていますが、季節が移ろうにつれて、自然と葉が枯れて茶色へと変化していきます。

実はこの杉玉の色が変わるスピードとお酒が熟成するスピードはほぼ同じだと言われていて、杉玉の色を見れば、お酒の状態がわかってしまうのです。
もともと、杉玉は奈良県にある「大神(おおみわ)神社」から始まった風習だと言われています。
大神神社はお酒の神様を祀った神社で、日本三大酒神神社にも数えられます。
その御神体である三輪山の杉を用いた杉玉には神の力が宿るとされており、毎年11月14日には、「醸造安全祈願祭」が開催され、全国各地から酒の作り手である醸造元が集まり、酒造りの安全を祈祷して、直径約1.5mもある「大杉玉」を新しく取り替えます。
「今年も無事に美味しいお酒ができますように」そんな作り手たちの祈りと想いが、この杉玉には込められているのです。
芸術の秋でもありますので、一句、詠んでみました。
『枯れ色が うれしを告げる ひやおろし』
・・・お粗末さまでした。
(副館長)
<参考>
・こいしゆうか, SAKE TIMES監修. 日本酒語辞典: 日本酒にまつわる言葉をイラストと豆知識でほろりと読み解く. 誠文堂新光社, 2017, 184p.
