落とし物は宝物!?

みなさんこんにちは。コミュニケーターのザリガニさんです。

みなさんは散歩が好きですか?私は好きです。散歩中の景色を楽しむのも良いのですが、私のおすすめの楽しみ方は足元に落ちている“生き物の落とし物“を探すことです。これは木の下でみつけた落とし物です。

みなさんはこれが何かご存知でしょうか。ちなみに落とし主はおそらくトラフズクというフクロウの仲間です。下の写真は私が散歩中に出会ったトラフズクの幼鳥です。

木の上にいるトラフズクの画像。

フンかなと思った方がいるかもしれませんが、フンではありません。今日はこの不思議な落とし物についてご紹介します。


突然ですが、私は手羽先のからあげが大好きです。さて、人間が手羽先を食べるとき、どのようにして食べているでしょうか。まず、スーパーなどであらかじめ羽などが取り除かれた手羽先を買い、調理します。そして、歯を使って上手に骨から肉を取り、よく噛んでから飲み込みます。そして胃で溶かして栄養を吸収します。

では、トラフズクはどのようにして食事をしているのでしょうか。

トラフズクは小型の哺乳類や鳥類を食べます。トラフズクは食べる前に獲物の骨や毛などをきれいに取り除くことができません。また、歯が無いので食べ物を噛み砕くことなく、丸のみにします。では、丸のみにしたあとの食べ物はどうなるのでしょうか。

鳥類には2つの胃があります。1つ目の胃では食べ物を溶かす液と食べ物を混ぜ合わせます。2つ目の胃では溶けて柔らかくなった食べ物を細かく砕きます。2つ目の胃は筋肉が発達しており、この筋肉の収縮によって食べ物をすり潰しています。

鳥類の消化のしくみを示した図。

こうして栄養を体に取り込んでいくのです。このとき体に取り込まれずに残ったものをぎゅっとまとめて口から吐き出します。これを“ペリット”と言います。ペリットを吐き出すのは動物性の物を食べる鳥や、かたい種子を砕く丈夫なくちばしをもたない鳥だけです。

(ちなみに鶏の2つ目の胃は焼き鳥でいう砂肝です。食べたことがある人はわかると思いますが、筋肉が発達しているので食感がコリコリしていて美味しいです。私は砂肝も大好きです)

ということで、最初にお見せした落とし物の正体はトラフズクが吐いたペリットでした。「吐く」と聞くと体調が悪いのかなと思う方がいるかもしれませんが、鳥の場合はそうではなく、からだを早く軽くする、口から胃までの通り道をきれいにするなどの効果もあると考えられています。

人間の食事とトラフズクの食事の過程を比較した図。

こうしてみると人間とトラフズクの食事は順番が異なっているのですね。面白い!


ところで、みなさんはペリットの中身が気になりませんか?ここからはトラフズクのペリットの中身を見てみましょう。今回はこちらのペリットを使います。

トラフズクのペリットの画像

小さな羽根や毛の繊維、骨が見えますね。ピンセットを使って少しずつ崩していきます。毛や骨がからまっていて慎重に崩さないと中の小さな骨が折れてしまいそうです。骨の間に詰まっている毛をごっそり取る感覚はブリカマの塩焼きを食べるときに似ていました。私はブリカマも大好きです。

さて、仕分け作業が終わりましたよ!骨とそれ以外のものに分けたものがこちらです。

トラフズクのペリットを仕分けした後の画像

骨が砕けて小さくなってしまっているものや見逃してしまったものもあり、すべての骨を取り出すことはできませんでした。

今回の仕分け作業では頭の骨を2つ見つけることができました。

どちらも小型の哺乳類の可能性が高いですね。

小さな羽根がたくさんあったので鳥類の頭も出てくると思っていたのですが見つけられず、すでに粉々に砕かれてしまっていたようです。

他にも形が特徴的で面白い骨がたくさんあり、紹介したかったのですが、長くなるのでまたの機会にしましょう。


鳥について研究するとき、ペリットのような鳥の落とし物を調べることはとても重要です。ペリットを調べれば、実際に鳥が食事をしているシーンを見ていなくても、どんなものを食べているのか知ることができます。また、調べたい鳥を捕まえることや解剖(体を切って中を調べること)をしなくてもよいので、鳥の落とし物を調べることは鳥たちにとっても負担が少ない方法です。

また、鳥の落とし物はペリットだけではありません。羽根やフン、卵の殻など鳥の謎を解き明かす重要なカギとなるものがたくさん落ちています。

鳥たちにとってはただの落とし物なのかもしれませんが、鳥たちについて詳しく知りたい人たちにとっては宝物⁉なのかもしれませんね。みなさんも散歩をするときは足元に注目してみてください!鳥たちの落とし物がみつかるかも⁉

コミュニケーター ザリガニさん

<参考>

藤井智之. 増補改訂 フクロウ完全飼育: 飼育、品種、接し方がよくわかる , 誠文堂新光社, 2020, 240p.

小宮輝之監修. ポンプラボ編. 鳥の落としもの&足あと図鑑. カンゼン, 2024, 160p.

箕輪義隆. 鳥のフィールドサイン観察ガイド. 文一総合出版, 2016, 144p.

Alan Sieradzki. Heimo Mikkola, ed. Designed for Darkness: The Unique Physiology and Anatomy of Owls. IntechOpen, 2022, 24p.

David C. Houston, Gary E. Duke. “Physiology”. Raptor Research and Management Techniques. David M. Bird, Keith L. Bildstein, eds. Hancock House Publishers, 2007, p.267-292.